トヨタ人の合言葉「なぜなぜ5回」の威力
丰田人的口号——“五问缘由”的威力
東洋経済オンライン 8月11日(木)6時0分配信
トヨタでは「失敗」という言葉をそうそう使いません(写真:ロイター/アフロ)
在丰田很少用到“失败”这个词。
「失敗」――多くの方が、ドキッとするこの言葉。上司から叱られたり、同僚に迷惑をかける原因になるので、極力避けたいというのが多くの方の思いではないでしょうか。しかしそんな「失敗」、トヨタでは大切な財産とされています。『トヨタの失敗学』よりその深いわけをご紹介します。 弊社には、40年のトヨタでの現場経験をもつトレーナーが約60名所属し、国内外の現場改善をお手伝いしています。彼らは「失敗」を上手く活用することで将来の「成功」につなげています。いかに失敗を活用するのか、この記事ではご紹介していきます。
“失败”——一个很多人都心生畏惧的词。许是因为会被上司斥责,给同事带来麻烦,大多数人都会尽力避免失败。但是那样的“失败”在丰田看来都是重要的财富。根据《丰田的失败学》,我来给大家介绍一下其中深层的原因。我司有大概60名左右的训导员,他们在丰田现场的工作经验长达40年,一直致力于帮助改善国内外的现场工作。如何活用失败,我会在这篇报道里做一个介绍。
■ トヨタでは「失敗」は禁句
在丰田“失败”是禁语
トヨタの現場でも、想定通りにいかないことは多々あります。ミスやトラブルは日常茶飯事。それでも、社内で「失敗」という言葉は使われません。弊社専務の森戸正和はこう言います。
在丰田的现场,有很多事并不会按照事先预想的进行,失误和故障是家常便饭。即便如此,在公司内也不会称之为“失败”。我司董事长森户正和如是说。
「失敗は、『失い、敗れる』と書くように、失地回復できず、そこで“歩みを止める”イメージです。一方、トヨタで『失敗』の代わりによく使われるのが、『問題』や『不良』という言葉。これらは発生原因を突き止めて、解決していけるものです。私たちは、どんな問題やトラブルが起きても、必ず挽回し、前に進むことができる、そう考えています」
“从‘失败’二字的写法,即能看到‘失去’和‘败北’,它有种‘无法收复失地’,‘就此止步不前’的意味。另一方面,我们丰田使用‘问题’或者‘不良’之类的词,来取代‘失败’,这样说就使其变成了可以追查到原因并能够得到解决的事。我们的想法是,不管发生什么样的问题和故障,都一定会努力挽回,奋力前进。”
一時的に「失敗」に見えることを挽回するのに必要なのは、「絶対に諦めない」という姿勢。トヨタではこの姿勢が非常に大切にされています。
要想挽回一时可见的“失败”,不可或缺的态度是“永不言弃”。丰田是非常重视这种态度的。
トヨタの管理監督者の人事評価では、『革新的発想』『適切な状況判断』等の10項目がありますが、その中には『粘り強さ』という項目があります。トヨタにはこの項目が突出して高い管理監督者が多くいると言われていますが、その背景には「諦めない」ことの重要性が上司から部下へと脈々と受け継がれているという背景があります。
对于丰田管理人员的人事评估,有“改革创新”、“适当决断”等10个项目。其中有一项是“不屈不挠的精神”。丰田的高层管理人员这项评分都很突出,其背景也是从上司到部下,对“永不言弃”精神的重要性,都一脉相承地继承了下来。
それを象徴する、現在のトヨタ生産方式の第一人者が若かりし頃のエピソードをご紹介しましょう。
下面我来说一说,作为其象征的,当今丰田生产方式第一人年轻时候的小故事。
トヨタ生産方式において重要な「かんばん」。何を・いつ・どこで・どれだけ生産・運搬するかを書いた指示カードのことですが、聞いたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
想必有人听说过写有丰田生产方式的重要 “标牌”:那是一个写有“产品名”、“生产日期”、“产地”“产量”“搬运与否”的指示卡。
その導入支援のために、彼が仕入れ先に派遣されたときのこと。ある日彼は、かんばんが1枚なくなっていることに気付きました。色々と探したものの見つからず、諦めて上司に報告に行くとこのように言われました。
「見つからないのは、見つけるまで探さないからだ」
那时为了导入标牌,他被派去供应商那里。有一天,他发现一张标牌不见了,找了很久都没找到,最终只好放弃。去跟上司汇报的时候,上司说:“你之所以找不到,是因为没有坚持到找到为止。”
白旗を上げるのが悔しくなった彼が深夜まで探し回ったところ、部品箱の底に張り付いているかんばんを発見。当時は部品箱の上にかんばんを乗せるのが常識でしたが、上の箱の底にかんばんが張り付いてしまったのです。
他为自己轻言放弃的行为而感到后悔,一直找到深夜,终于在部件箱的底部发现了贴在上面的标牌。当时普遍的做法是把标牌贴在部件箱上方,不料想却粘到上面箱子的底部去了。
そこで彼は、部品箱の横にホルダを作成し、そこにかんばんを差すしくみに変えました。そうすることで、かんばんの紛失がなくなると同時に、箱が重なってもかんばんの内容が一目で見えるようになりました。もし彼が途中であきらめてしまっていたとしたらこのような改善は生まれず、かんばんの導入自体も大幅に遅れていたはずです。
因为这件事,他在部件箱侧面做了固定夹,再把标牌插进去。这样一来,再也没有标牌遗失的事情发生。与此同时,即使箱子叠放在一起,里面的内容也变得一目了然。假如他之前中途放弃的话,也就不会有这个改善的举措,标牌的导入也应该会大大延迟。
このように、日々の仕事の様々な場面で、上司は部下に対して「諦めない」大切さを説いているのです。
在类似的各种各样的日常工作场合,上司都在用“永不言弃”来劝导部下。
■ 怒るのではなく、「なぜなぜ5回」
发怒无益,“五问缘由”
失敗したら怒る――当たり前のことのようですが、トヨタではこれも厳禁です。トヨタの上司は部下が失敗をしても「なにをやっているんだ!」と怒ることはなかったと、トレーナーは口をそろえて言います。
一失败就恼怒——看似是理所当然的事,在丰田却是被严禁的。训导员们都会说,面对部下的失败,丰田的上司也不能发火说“看你都干了什么!”
トヨタの上司は、失敗したのは部下個人ではなく、しくみが悪かったからであると考えています。ですから、問題の真因を見つけて改善し、再発防止をすることに全精力を注ぎます。個人の責任追及をするのではなく、将来にわたって価値を生む真因追究に注力するのです。
丰田的上司们认为,失败不仅仅是部下个人的原因,而是整个运作流程有问题。所以要倾尽全力找到问题真正的原因所在并且加以改善,防止再次发生。不是追究个人责任,而是要致力于找寻关系到未来产出价值的症结所在。
このスタートとなるのがトヨタでは有名な「なぜなぜ5回」。これ以上掘り下げることができないというところまで、諦めずに「なぜ」を繰り返していきます。
3回で見つかることもあれば、10回必要になることも。森戸はいいます。
以此为出发点,形成了丰田有名的“五问缘由”。一直挖掘到挖不出来为止,坚持反复审查“缘由”在何处。
森户董事长说:“有时审查三次就能找到缘由,有时都得审查十次。”
「『なぜ』という言い方に、詰問されていると感じる方もいるようです。『なぜ、そんなバカなことをしたんだ』というように。実際に海外では1回目の『Why』で険悪になり、2回目の『Why』でケンカが始まるという冗談もあるほどです。でも、トヨタの人がなぜを繰り返すのは問いつめたいからではありません。その真意がきちんと伝わるよう、『何が起こった?』というニュアンスで話すようにするといいでしょう」
“有人觉得这个‘问’仿佛有种被‘质问’的感觉,就好像在说‘为什么做出那种蠢事呢’实际上在国外,还有人开玩笑说,被质问一次‘why’形势就会变得严峻;被质问第二次 ‘why’就得打起来了。并非是丰田的人想要反复质问为什么,我们真正想要传达的意思更倾向于询问‘发生了什么’。这样理解似乎更好。”
失敗しそうなときにやりがちなのが、力わざで火消ししようとすること。でもこれも得策とはいえません。
そのとき、一見問題は鎮火したように見えますが、実際には火種は全く消えていません。見えなくなっているだけです。
人们在面对要失败的时候,往往想到的是大事化小小事化了,但是这称不上是上上策。
乍一看问题的火好像被扑灭了,实际上火种完全没有消失,只是看不到罢了。
トレーナーの森川泰博が管理監督者として新車ラインの立ち上げに携わった時、このような経験をしました。新車立ち上げラインは、作業に慣れていないためラインが止まりがちですが、お客様のもとに早く車を届けるために稼働率の維持向上が必要です。そこで森川は、稼働率維持のために自分がラインに入る決断をしました。その様子をみた上司が、森川にこう言い放ちました。
「ラインに入るなら、ずっと入っておけ。どうせ、楽したいんだろう」
训导员森川泰博作为管理监督者参与启动新车产线的时候,经历过这样的事:由于是刚启用的产线,对于操作不熟悉容易导致产线停运,为了将车尽早送到客户手上,就必须想办法保证生产效率。为此,森川决定亲自加入到生产线中去。上司看到他这样,斩钉截铁地对他说:“你要下产线,就一直都下好了。反正你就是想偷懒而已。”
森川はその時のことをこう振り返ります。
「上司の言葉にカチンときて『ラインを止めないために必死なんだ!』と反論しようとしました。しかし、後になって冷静に考えると自分の過ちに気付きました。管理監督者である私の仕事は、目先の稼働率維持のためにラインに入ることではなく、中長期的な稼働率維持のために、ラインがうまく回らない真因を探し改善することだと上司は言いたかったのです」
森川回想起那时候的事,这样说道:
“一听上司这么说我真的很生气,想反驳他说‘我一定会拼尽全力不让产线停下来的’。但是之后冷静下来想一想,才意识到自己的错误。上司想要说的是,作为一个管理监督者,我的职责不是为了保证当前的生产效率而亲自下产线,而是为了保证长久的生产效率,找出产线不能正常运作的真正原因并加以改善。”
できる人が急場凌ぎの火消しに入ってしまうというのは、新人が担当する仕事でもよく発生しがちはないでしょうか。例えば、新人のスキルが足りなくて仕事が回らない、納期遅れになるという場合。誰かがいつも手伝っていては、継続的にバックアップ要員が必要になるだけで、根本的には問題は解決しません。一時的にバックアップ体制をとりつつも、新人だけで仕事がまわるように教育を行ったり仕事のやり方を見直す必要があります。
在新人负责一项工作时,不也经常发生这种老手帮忙应急救火的事吗?比如在新人因为技能不足,导致工作不能顺利展开、延迟交货的情况下,如果总有人帮他,就变成得一直帮下去。正因为如此,就导致根本问题得不到解决。虽然暂时协助的体制是不可避免的,但也要实行另一种工作方式上的教育,让新人能独自应对工作,这也是十分必要的。
■ 忘れたい失敗こそ「記録」する
想要忘却的失败更要“记录”
「過去の失敗は忘れてしまいたい」という一般的な心情を考えると、過去の失敗はなかったこととして忘れたいもの。そうすると、同じような失敗が発生しがちです。トヨタの中興の祖である豊田英二は「失敗はキミの勉強代だ」と、失敗したことを記録に残しておくことをすすめたといいます。
人一般都会想要“忘却过去的失败”,把它当作没发生过一样从记忆里抹去,这样是很容易重蹈覆辙的。曾经在丰田逆转乾坤的大功臣丰田英二说过:“失败就是你交的学费。”他劝诫大家说,还是要为失败留下记录才好。
現代のトヨタにも、失敗の共有を促す取組みが数多くありますが、代表的なのが毎月定例の「品質会議」です。ここでは、現場で発生した問題について、「どんな問題が発生し、何が原因で、どんな対策をとったのか」を管理監督者が重役に報告する会議で、その内容は全社で共有されます。失敗の情報を共有することで、同じような問題が他の工場などで発生した際にもスピーディーな対策が可能で、事前に対応すれば失敗の発生自体を未然に防止することもできます。
今天的丰田,“分享失败”的推进措施不胜枚举。其中具有代表性的就是每个月例行的“品质会议”。在会上,管理监督者会把工作现场 “发生了什么问题,原因是什么,采取了怎样的对策”都报告给董事,报告的内容全公司共享。因为将失败的情报做了共享,在其他工厂发生类似的情况时就可以快速应对,也可以防患于未然。
トレーナーの高木新治は、トヨタ時代に「振り返りシート」という名の失敗記録をつけることが義務付けられていたといいます。
训导员高木新治,可以说是把名为“检讨报告”的失败记录作为一项义务在丰田时代定了下来。
「半期に一度、自分の仕事を振り返り、失敗したことを1枚の紙に記録するのです。品質会議の内容と同じように、『どんな失敗が発生し、何が原因で、どんな対策をとったのか』という内容を書きます。
“半年回顾一次自己工作中的失败,总结在一张纸上记录下来。和品质会议一样,写下‘发生了怎样的失败,原因是什么,采取了怎样的对策’等内容。
日々の業務に追われていると、過去の失敗やミスを振り返る余裕はありません。しかし、半期に一度の『振り返りシート月間』があることで、いやでも過去の失敗を思い出し、改めて気が引き締まる思いになったものです」
人们被日常繁琐的业务所迫,总是没有时间和精力来回顾过去的失败和错误。但是半年一次的‘检讨报告月’期间,即使不情愿也得回顾过去的失败, 神经也会变得再度紧绷起来。”
忙しい毎日の中でも、しくみがあることで強制的に失敗を振り返ることができるのです。
即使再忙,却因有了这样的强制措施,也能让人回顾反省自己的失败。
■ 挑戦したときの失敗は、その後の財産になる
挑战时的失败会成为日后的财富
さらに高木が組長を務めていた頃には、このような体験もありました。3交代制のラインで3つの組が同じ作業をしており、次の組に向けた引き継ぎ用の申し送り帳がありました。そこには、普通は上手くいったことを書くものですが、高木は部下に難しいチャレンジを多くさせ、その中での失敗や今後の課題を書くようにと言ったのです。
另外,在高木担任组长期间,也经历过这样的事:因为产线是三班倒的,三班做着同样的工序,那就会给下一班写有联络事项书。一般写的都是顺利完成之类的,但高木却给了部下很多有难度的挑战,并让他们把遭遇到的失败写进日后的课题里。
「チャレンジした末の失敗は、メンバーの技能をアップさせ、大切な財産になります。メンバーも失敗を成長の記録としてとらえ、積極的に取り組んでくれました。
“挑战结果的失败,可以提升组员的技能,进而成为宝贵的财富。组员也把失败作为成长的记录记下来,并积极地全力解决。
当初は人材育成を目的に始めたこの取組みですが、失敗したプロセスを記録・共有することは、他の組のメンバーにとっても学びになり、失敗を防ぐヒントになったようです」
当时的初衷是以培育人才为目的而开始这项计划的,当记录下失败的过程并做了分享,对于其他组的组员来说,其实也是一种学习,并为防止再次失败起到了一定的启示作用。”
このように失敗を振り返ることは、個人の成長のステップになるだけでなく、それを記録・共有することで部署全体のレベルアップにもつながるのです。
像这样回顾失败的过程,不仅仅是作为个人成长的一个阶段,记录并共享,也与整个工作岗位的全面提升息息相关。
10/8(土)に筆者のセミナーが行われます。トヨタメソッド、仕事の効率化に興味のある方は、ご参加ください。
10月8日(星期六)笔者将举办研讨会。对丰田法则,工作高效化感兴趣者,欢迎参加。
岡内 彩